ハイデガー『存在と時間』と存在論
Martin Heidegger の主著『存在と時間』を軸とした存在論のメモ。「存在とは何か」という問いを、それ自体が再帰してしまう困難として捉え直す。
存在論的差異
A is Bにおいて A・B は存在者(あらゆるもの: ハサミ、クジラ、自分自身)であり、これを分析するのが諸科学。- 一方
is(存在)は〈あるもの〉ではなく、あるものをあらしめつつそれ自体はあるものに留まらない「何か」。これを分析するのが哲学だ、とハイデガーは主張する。 - 伝統的存在論は存在を存在者へ同化(実詞化=存在者化のリスク)してきた。両者を区別する「存在論的差異」の理解が『存在と時間』の最重要点。
現存在
- 現存在: 存在者だと自覚しながら存在の概念を自ら生み出している存在(=人間)。現存在が存在を生み出す過程を分析することで、間接的に存在を位置づける。
- 目標は存在を時間性から説明すること。しかし下巻は書かれず、語ることで存在が誤解される恐れから、詩で示そうとする神秘主義へ傾く。
周辺
- フッサール現象学 を継承し、エポケー(判断停止)、内在と超越で考える。
- 実存主義(キルケゴール、ニーチェ)— 実存=自身しか体験できない特別な経験、内省が求められる。
- 把持(Retention)など時間意識の議論は現象学と重なる。
関連: tractatus-logico-philosophicus / dialectic-aufheben / _moc-book-notes