刑法上の因果関係論
ある行為と結果との間に法的な結びつきがあるかを判定する刑法の枠組み。因果関係の存在は法律効果(犯罪の成立)の要件となる。
階層構造
- 条件関係: 行為が結果に対する条件として事実としてつながっている関係。「あれ(行為)なければ、これ(結果)なし」という事実的判断が基礎。
- 相当因果関係: 条件関係 + 相当性。「その行為から通常その結果が生じるといえる」関係。
- 相当性(判断基底論): 何を判断材料に含めるかで3説が対立する。
- 主観説: 行為者が認識・予見していた/しえた事情のみを基礎とする(支持者ほぼなし)。
- 客観説: 行為当時に客観的に存在した全事情を基礎とする。
- 折衷説(旧通説): 一般人が予見可能だった事情 + 行為者が特に認識していた事情を基礎とする。
典型例として「重度の心臓病を知らずに背後からタックルして死亡させた」ケースで、各説により因果関係の有無の結論が分かれる。
危険の現実化説
大阪南港事件に端を発する「相当因果関係の危機」を契機に、近年は危険の現実化説が通説の地位を占める。判例は条件説をベースに、行為後に介入した事情をどの程度因果経過に含めるかを危険の現実化の枠組みで評価していると整理される。
客観的帰属論
ドイツで有力な立場。因果関係の判断を危険創出と危険実現の二要素に分けて行う。
統計・誤謬との接続
因果の判定は本来「行為をした世界線」と「しなかった世界線」を比較したいが不可能なため、統計分野では無作為抽出で等質な集団を作り、実薬と偽薬を比較してP値を見る(反実仮想の近似)。これは 相関と因果の誤謬 とも通じる。相関を因果と取り違える典型に、因果関係の逆転(消防士が多いほど火事が大きい)や、第三の交絡因子(アイスクリーム売上と水死者数 ← 共通原因は夏)がある。
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